趣味の達人 水彩画 片桐治雄さん

障子窓にはお孫さんの作品も「おじいちゃんが淋しくないように」

片桐さんのお宅にお邪魔すると、まず、入ってすぐの洋室にたくさんの水彩画が額に入れ、飾られているのが目に飛び込んできます。これらは全て片桐さんご自身の作品。水彩画の淡い色合いが目に優しく、懐かしさすら覚える、温かみのある作風に心和みます。
そして、洋室の奥の和室。こちらには、障子窓に、元気いっぱいの絵が描かれた画用紙が多数。こちらは、片桐さんのお孫さんの作品。「おじいちゃんが淋しくないように、僕が絵をプレゼントしてあげる」といって、描いたものなのだそうです。
こんなお話を伺って、心があたたまったと同時に、「こんな趣味のおじいさんがいたら、きっとお孫さんも絵心がついてくるのだろうな」と考えました。そんな、文化的な趣味を楽しんでおられる生活を、「うらやましい」と感じました。

左 / 壁にはご自身の作品が。絵のある住まいの魅力が感じられます。
右 / 部屋にはお孫さんの絵が。片桐さんが淋しくないようにと、プレゼントしてくれるのだそうです。

会社を定年後、知人から「絵をやれ」といわれたのがきっかけ

さる6月、KONDOグループ本社の1階ギャラリーにて、片桐さんの個展が開かれました。「蔵造りの家」「時の鐘」「本丸御殿」といった地元埼玉の情景をはじめとするその作品は、多くの方から、「心がほっと和む」「どこか懐かしい気分になる」といった感想が聞かれ、非常に好評を博しました。
「蔵造りの家」などいくつかの作品には、問い合わせが入り、「この絵を買いたい」という人も多いのだとか。
「趣味で描いているものなので、絵を買っていただくつもりなどないんですが、『この絵は情緒があっていい。これがあると、晩酌が美味くなるから、ぜひとも売っていただきたい』などとおだてられたりして、ついつい断り切れませんでね」と、笑いながら片桐さん。資料用の写真から下絵を起こし、これに着色して仕上げるのに、およそ一週間かかります。
このように、プロ顔負けの力量を誇る片桐さんですが、水彩画を始めたのは、約2年前。会社を定年退職した後、退職者の親睦会の幹事を務めておられましたが、それも任を終え、暇になって、「何かやらないといけないな」と思っていたところに、知人から「それなら、絵画をやれ」といわれたのが、そのきっかけだったそうです。

 

水彩画教室の先生からも「あなたの絵には『心』がある」


若い頃、雑誌に連載していた漫画の原画も見せていただきました。

このように、片桐さんが水彩画を始めたのは最近のことですが、実は、若い頃に漫画家を目指し、デッサンなどの基本的な勉強をしておられたのだそうです。会社勤めのかたわら、教育雑誌などに、漫画を連載しておられたこともあって、もともとセミプロの漫画家だったことが、その力量の裏付けとなっているのかもしれません。
「私の水彩画なんてのは我流ですしね、写真に忠実に下絵を起こして、それに色を着けている、いわば塗り絵のようなものですよ」と、片桐さんは謙遜されますが、「絵を始めて半年くらいして、水彩画教室にも通うようになったんですが、そこで先生から、『あなたの絵はとてもよい。絵に『心』がある』なんて、褒められたものだから、調子に乗ってしまって(笑)」(片桐さん)
確かに、片桐さんの絵を拝見すると、その精緻な仕上がりもさることながら、その穏やかな人柄を窺うことができます。
写真が発明された19世紀、「事実を正確に切り取るには、写真を撮ればよい。ならば、絵は何を目指すべきか」が争点となり、印象派やピカソなどのキュビズムが生まれたのは有名ですが、絵画の価値は、写真のようであることより、プラスアルファ、そこに何が感じられるかということ。字が人を表すのと同様、絵の細部に片桐さんの作家性が宿っているのだと思います。
片桐さん、これからも、水彩画を通じて、多くの人の心を和ませてください。

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