お金の相談室

第3回 大切な住まいだから「リバースモーゲージ」

リバースモーゲージって?

リバースモーゲージとは、高齢者が居住する住宅や土地などの不動産を担保として一括または年金の形で定期的に融資を受け取るしくみのこと。受けた融資は、利用者の死亡、転居、相続などによって契約が終了した時に、担保不動産を処分。元利一括で返済されます。

リバースモーゲージは、60年代にアメリカで生まれました。アメリカでは、約8万件の契約件数があり、市場として定着しつつあると言われています。
日本でも81年の東京都武蔵野市以降、世田谷区、神戸市などの自治体や信託銀行が制度を導入しましたが、あまり注目されませんでした。特に、バブルが崩壊してからは、ほとんどの信託銀行がリバースモーゲージから撤退してしまい、リバースモーゲージの提供先がほとんどなくなってしまったのです。

リバースモーゲージのメリットは?

リバースモーゲージが再び注目されるようになったのは、公的年金制度の危機がささやかれ、自己年金に対する意識が高まった2001年以降のことです。リバースモーゲージを利用すれば、持ち家を売却せず、そのまま住み続けながら、自己年金を受け取ることができるからです。ゆとりのある生活を送ることができ、大切な我が家を手放す喪失感を味わわなくて済むというのが大きなメリットです。
「日本は資本主義ではなく、地本主義」という言葉がありましたが、日本人は不動産に対する執着心の強い国民と言われています。代々、受け継いできた土地を子孫に残したいという想いが強く、それゆえ80年代、日本でリバースモーゲージが普及しなかったとも言われています。

しかし、少子化社会となって、ずいぶん事情が変わってきました。
すなわち、夫、妻とも一人っ子。一夫婦に相続する家2つは要らない、というケースが増えてきたのです。日本におけるリバースモーゲージの逆風となった地価下落も2006年、ほぼ下げ止まった感がありますが、今後、日本においても利用者が確実に増えていくだろうと言われています。

終の棲家だから、リバースモーゲージ

ほとんどの金融機関が撤退した中、リバースモーゲージを提供し続けてきた信託銀行が、中央三井。
以前、雑誌記事の取材で訪れたとき、伴侶をなくし、独り身になって老人ホームに入居したお年寄りで、リバースモーゲージを利用している人が多い、という話を伺いました。

ふだんは老人ホームにいて、住んでいないとはいえ、多くの思い出がつまった、大切な「終の棲家」を手放すのは…という気持ちは、何となくわかります。残す必要はないけれども、自分が生きている間は…??「住」という字は、「人が主」と書きますが、人の気持ちにやさしい制度として、リバースモーゲージを利用する人が増えれば、という気がします。