お金の相談室

第1回 固定金利と変動金利、どちらを選ぶ?

セオリー的には長期固定だが…

常識的に考えて、現在、金利は上昇傾向にあります。したがって、変動金利で住宅ローンを組むより、固定金利にしておいたほうが低金利となるため、固定金利を選ぶべし、というのがセオリーです。ただし、いくつか注意すべきポイントがあります。

まず、注意したいのは、固定金利にも、長期と短期の2種類があるということ。
10年固定などの長期なら、しばらく金利は据え置きとなりますが、2~3年などの短期だと、金利見直しのとき、すぐに金利が上がって返済負担が増えるリスクがあるからです。
とはいえ、現在、金利が上がっているのは長期固定だけ。短期固定は低金利のままで、それどころか、各銀行が金利優遇キャンペーンを競っているために超低金利のローンが増えており、みずほ銀行や三井住友銀行のように1%を切る商品も登場しています。一方で長期固定は公庫でさえ6年ぶりに3%の大台に乗っているので、短期と長期とで2%以上の差がついています。

結局、長期固定金利の場合、今後の見通しが織り込まれ、その分、高めの金利設定。例えば、10年固定で住宅ローンを組み、その10年の間に再び低金利政策、ということになって、高めの金利を支払い続けなければならないということだって考えられるわけです。

金利1%の差は支払総額に大きく影響

現在のように、2%以上の金利差がある場合、支払総額ではどれくらいの差になるのでしょうか。
仮に、3,000万円を35年返済&元利均等返済(金利1%)の場合、支払総額は3,557万円。これが金利3%になると、4,849万円。じつに、約1,300万円もの差となってしまいます。
もちろん、1%というのはキャンペーン金利であり、2~3年後の金利見直し時には確実に上がります。そして、金利上昇局面にあることを考えれば、10年固定の3%よりももっと高い金利となっている可能性が大きいといえます。しかし、長期の場合は高めの金利が前倒しで適用されているのだと考えれば、必ずしも得策とは言えないことがおわかりいただけると思います。

最初のうち、借入残はほとんど減らない

そこで、もう一つ注意したいポイント、それは、ローンには元利均等返済と元本均等返済の2種類があるということ。
元利均等返済は、月々の支払を一定にする方法で一般的なもの。元本均等返済は、元本を一定ずつ支払っていき、金利分を含めた支払総額が、借入残が減るにしたがって少なくなっていくものです。
よく言われることですが、元利均等返済の場合、最初の頃は金利ばかり払っていて、借入残がほとんど減っていないもの。したがって、2?3年の短期固定で低金利を享受しても、金利見直しの時点で借入額がほとんど減っていない、ということが、ままあることになります。

つまり、金利差もさることながら、重視すべきはいかに借入元本を早く減らしていくか。最初のうち、金利分が支払額に占める割合は返済期間が長いほど大きいため、低金利をうまく利用したければ、返済期間を短めに設定したほうがよいことになります。あるいは、月々の支払を少なく抑えて、別途、貯蓄していき、100万円、200万円貯まったら、その都度、繰上弁済を行っていくことです。

「最適なローン選びは人それぞれ」と肝に銘じること

以上から、
「20年、25年といった短めの返済期間で短期固定金利を利用し、長期固定金利よりも支払額が少なくなる分+アルファを貯蓄して、繰上弁済を行っていく」
のが理想ということになります。
しかし、住宅ローンの支払は、少なからぬ負担。短期の返済期間では、月々の支払が難しいという人も多いでしょう。また、住宅ローンの支払と別に、繰上弁済資金を蓄える余裕がない人もいらっしゃるでしょう。つまり、返済期間、そして繰上弁済計画によって、どちらを選べば得かは異なってきます。
したがって、繰上弁済計画などもしっかりと組み入れた上で、お一人お一人、どちらがお得かをシミュレーションしてみることが大切。「金利上昇中だから、長期固定!」という単純な判断は失敗のもとなのです。