90年代、「エコロジー(環境保全)」という言葉が注目されました。そして、多くの企業がエコロジー活動への取り組みを始めました。
毎日のように報道される「森林破壊」、「拡大するオゾンホール」、「砂漠化」…といったもろもろの環境問題。このままではいけないと思いつつ、どうしてよいかわからないというのが実際のところ。そして、経済成長しなければ、豊かさを享受できない今日の経済のしくみ。このため、一時盛り上がったエコロジー活動も、バブル崩壊とともに、いったんは下火になってしまいました。
しかし、21世紀に入り、エコロジーへの関心は再び高まってきました。理由はいろいろありますが、そのひとつは中国をはじめとするBRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)経済の高度成長です。
人口13億人の中国が、もし、日本・欧米なみの生活を送るようになったら?
すなわち、自動車を乗り回し、電気をたくさん使い、モノを大量に消費するようになったら?
今日でさえ、深刻な問題なのに、これ以上拍車がかかったら、とても地球環境を保全することなどできなくなってしまいます。
しかし、だからといって、「自分たちは豊かな生活を送ってきたが、これから豊かになる国々はNO!」ということもできません。
こうしたことから、地球環境に負荷をかけない視点からの経済活動、生活文化の選択という根本からの見直しが求められるようになったのです。それが、健康や環境を重視した新しい価値観、ライフスタイルである「LOHAS」というわけです。
'Fringe' are now mainstream.
アメリカの雑誌「LOHAS Journal」によれば、今までマイナーと考えられてきた LOHASは、今や主流になっているそうです。すなわち、米国成人人口の30%、約5000万人以上が LOHASを重視する消費者であり、米国での市場規模は2268億ドル(約30兆円)全世界では5400億ドル余にのぼるということです。
日本でも、博報堂が首都圏在住者を対象にした調査で、「現在はやっていないが、今後やってみたい環境配慮型の行動」として「環境問題に取り組みが進んでいる企業の品物を買う」という回答が、65.1%とトップとなりました。
すでに多くの雑誌などで取り上げられ、言葉としては定着した感のあるLOHAS。環境問題への関心が高まることは素晴らしいことですし、LOHASな生き方を志向する人が増えていることは喜ばしいことです。
冒頭で述べた通り、LOHASのスタートは、地球の環境保全が根本的な見直しを迫られていることにあります。このため、一過性の流行ではなく、ますます多くの人に広がり、定着していくことになりそうです。
「環境問題が大切なことはわかるが、具体的にはどうしたらよいか、わからない」という人もいらっしゃることでしょう。
一般的には、LOHASな生き方とは次のようなものと言われています。
90年代のエコロジーブームのとき、「環境問題が大切なのはわかるが、大半の人は、便利さ、快適さを捨ててまで取り組もうとしないだろう」という人が少なくありませんでした。
たしかに、車に乗ってすいすい移動していたのを、これからは自転車・徒歩で、といわれたら、考えてしまう人は多いかもしれません。だからこそ、かつてのエコロジー活動は定着しなかったといってよいかもしれません。
LOHASな生き方は、価値観自体の転換というところに意味があります。
エアコン完備の部屋で快適に過ごすのもいいけれど、アウトドアで体を使い、汗を流す清々しさは素晴らしい、という考え方。電化製品に囲まれて、ゲームや音楽に興じるのもいいけれど、ガーデニングを楽しんだり、自然を目にして物思いにふけるのも悪くない、という考え方。
モノがあふれていなくても、健康的で幸せな時間を過ごすことはできるという「心」の要素が含まれているのが、LOHASの特徴なのです。
「LOHASな生き方」といわれて、こうしなければいけないというものはありません。いいな、と思うことを一つひとつ採り入れていきませんか?モノに頼らなくても、幸せだと感じられること。多くの人がLOHAS的な要素を少しずつ採り入れていくことが、環境にとってもいいということなのです。
カタチにとらわれず、自分の生活の一部として定着させていくこと、それがLOHASにとって一番大切なことかもしれませんね。